株式会社Wakutsuku
ローンチ初日で問合せ発生、2ヶ月→20日で検証終了新規事業のマーケを加速させたAI仮想ユーザー100人改善

Summary
- 概要
- 2025年11月設立のWakutsukuが開発する予約管理システム「Spekan」。限られた広告予算でテストマーケティングが難しい中、AIで100人の仮想ユーザーを生成して広告効果を事前に検証する「配信前配信」に挑み、配信の翌朝に初の問い合わせを獲得するまでを振り返ります。
- 業種
- 通信・IT
- 従業員規模
- 1名以上 - 10名以下
- ビジネスモデル
- BtoB オンラインサービス・SaaS
予約・決済・顧客管理を一元化し、施設運営の利益を上げることを掲げた予約管理システム「Spekan(スペカン)」を開発・提供する、2025年11月設立の株式会社Wakutsuku。レンタルスペースやジム、スタジオといった時間貸し・会員制の施設を運営する事業者に向け、スタートアップ企業のCTO経験をもつ代表の望月 直紀氏が自らプロダクトを開発しています。
前職でのご支援を評価いただき、独立後の最初のマーケティングパートナーとして、2026年8月よりLP改善と広告運用をTHE MOLTSにお任せいただきました。サービスリリースから日が浅く、予算が限られることからテストマーケティングとしての広告配信が難しい中、AIを活用することで100人の仮想ユーザーを生成し、事前に広告効果を検証する「配信前配信/AIシミュレーター」を実施。そこで得られた検証結果に基づいて業種特化型LPを企画し、初めて広告を配信した結果、翌朝には第1号となるお問い合わせを獲得しました。
今回は代表取締役の望月 直紀氏、本案件を担当したTHE MOLTSの高橋 翔太を交え、AI時代における新規事業の立ち上げとマーケティングのあり方や実際の取り組み、そして得られた成果について振り返りました。
目指すは、施設運営における利益への貢献。元CTOが挑む、AI時代の新規事業

高橋:望月さんとは前職のマーケティングのインハウス化でご支援させていただき、過去には実績記事にもご協力いただきました。2025年11月には株式会社Wakutsukuを設立され、施設運営の利益を上げる予約管理システム「Spekan」を立ち上げられています。改めて、独立と設立の経緯を教えてください。
望月:前職では、無人運営の施設予約や鍵の開閉などをIoTで実現する、いわゆる“鍵のDX”に関するサービスの開発にCTOとして携わっていました。開発部門というポジションから、どうしてもお客さまの施設運営までは直接的に貢献できず、利益を増やすところまでは手が届きませんでした。
事業として施設を運営していく以上、利益はどうしても必要です。鍵をDXしたその先、施設の利益向上に貢献するサービスこそ必要なのではないかと感じたのが、独立のきっかけです。
高橋:Wakutsukuさんとして初めてリリースされた「Spekan」は、どのようなサービスなのでしょうか?
望月:「スペース管理」というサービス名の由来通り、2026年9月時点では施設運営における予約管理や決済一元化を実現する「予約管理システム」というカテゴリのサービスです。「経費を減らす」「売上を増やす」「ストレスを減らす」「状態を可視化する」という4つの軸を中心に利益を上げるための機能、たとえば1週間以上施設を利用していないお客さまへのメール配信やCRM機能、スタッフのシフト管理までカバーしたいと考えています。
施設運営で利益を出すことは、簡単ではありません。私自身、Web業界に身を置きながら施設運営に携わって感じるのは、施設運営にはやり直しがきかない要素が多いことです。Webサービスの場合、ダメなら次のバージョンに変更してやり直せますが、施設運営には多額の初期費用が必要であり、賃貸契約によって一定期間は場所を変えてのやり直しができません。だからこそ、難易度の高い施設運営に取り組まれている企業や個人を助けられるサービスを通して、現場の課題に共に挑むパートナーでありたいと思っています。
高橋:望月さんはサービス開発に限らず、多くの業務にAIを使っていますよね。望月さん自身、AIをどのように位置づけているのでしょうか?
望月:出社してすぐAIへの「おはよう」から始まり、一日の振り返り相手もAIです。業務では、開発に限らず営業や各種オペレーションなど、ほぼすべてにAIを使っています。独立して感じたのは、「AIがある今、起業して良かった」ということです。時間と資金という制約から諦めざるを得なかった挑戦が、今ならAIで何とかできる。当社はバリューのひとつに「小さい実験を積み重ねる」を掲げており、AIでどんどんチャレンジしています。
AI活用で意識しているのは、大きく2つです。ひとつは、やりたいことを頭の中でしっかりイメージすること。AIはもっともらしい提案をしてくれますし、提示される「推奨」の選択肢を押し続けても形にはなります。だからこそ、こういうものを作りたいというイメージがないと、できあがっても「これ、何だっけ?」となりがちです。もうひとつは、AIに任せる作業でも、自分がやるならどういう工程でやるかを常に意識し、その工程で必要になる情報を先回りして渡すこと。AIはパートナーであり、主体はどこまでも人間であるべきだと思っています。
1日1〜2PV、広告予算は約10万円、テストマーケの余裕なし。マーケター不在の立ち上げ期

高橋:2026年8月にご相談いただいた時点で、「Spekan」の集客はどのような状況だったのでしょうか?
望月:やっと開発が落ち着いて、これから世間の皆さんに知ってもらうにはどうしたらいいか、というフェーズでお話しさせていただきました。当時のサービスサイトは1日1〜2PVという状況からのスタートです。「問い合わせが止まらない」状態がマーケティングの理想ですが、SEOは費用がかかりますし、成果に繋がるまで一定の時間が必要になります。少しでも収益を上げて事業を継続していくためには、インターネット広告を配信して顧客を獲得する必要があります。
一方で広告予算は、限られに限られていました。一般的に立ち上げたばかりのサービスであれば、テストマーケティングを兼ねて広告を配信してデータを収集し、傾向を掴んだうえでターゲティング精度を高めていくのがセオリーです。しかし当社には、データを集めるために広告を配信できる予算もデータもないため、予測で進めていくほかありません。そして、その予測を行えるだけのマーケティング経験はなく、マーケターもいませんでした。
高橋:「Spekan」のターゲットの事業やビジネスモデルから考えて、クリック単価が比較的高いジャンルだと感じていました。施設向けのシステムは、契約さえできれば解約が発生しにくく、LTV(顧客生涯価値)が高いビジネスモデルであるため、強めに入札しても中長期的には採算が合うのです。
1日で数十万円配信しきれてしまう広告在庫(広告枠)があるジャンルに対して、Wakutsukuさんとして配信できる広告予算は月額で10万〜15万円。しかし創業間もないタイミングで広告をまったく配信せず、ただ問い合わせを待っているだけでは、事業が止まってしまう可能性もあります。
さらに、当時の「Spekan」のページは「施設運営をしている皆さまへ」という広い訴求で、導入実績も企業のロゴもありませんでした。いいサービスであったとしても、ターゲットが自分たちに合ったサービスかどうか判断できない状態のまま広告配信するのは危険だと感じました。
テンプレ通りではなく、状況に合ったステップを示してくれた。独立後に再び声をかけた理由とは

高橋:本格的に集客をスタートするにあたって、再びお声がけいただいた経緯を教えてください。
望月:サービスローンチ後、集客について社外の方に相談したのは高橋さんが最初で、「広告をお願いするなら、まず高橋さん」とずっと考えていました。前職で高橋さんとご一緒していた頃は、若手社員にマーケティングの基礎を教えつつ広告配信を手伝っていただいたことをよく覚えています。テンプレート的な取り組みではなく、組織の状況とサービスのフェーズに合わせた最適解でご支援いただいたことが強く印象に残っていました。
高橋:立ち上げたばかりの時期は、特に社外の力が必要不可欠かと思います。望月さんは外部のパートナーとどのような関係を築きたいと考えていますか?
望月:抽象的な表現になりますが、同じ方向を向ける人、それに尽きると思っています。AI登場以前であれば、専門外の領域についてプロの方に「こういうものですよ」と言われたら、その言葉を信じて進むしかありません。
しかし現在は、AIで前提情報を収集し、さらに一定水準まで施策を立案できるようになりました。私が得意とするWeb開発を含め、今後ますます未経験者とプロの技術境界線は薄れていくはずです。
そうした変化のなかで、これからはケイパビリティ以上に、目指す方向性や「いかに気持ちよく高め合える関係か」という人間性や価値観の一致こそが、パートナー選定で最も重要な要素になると考えています。
100人の仮想ユーザーがLPに物申す「配信前配信」。シミュレーションの結果、業種特化型に路線変更

高橋:一般的な広告運用では、まず配信してデータを集め、その結果をもとにLPやクリエイティブを改善していくのがセオリーです。特に昨今は、媒体側での自動最適の技術も高まってきているため、まずは幅広く配信し、そこから最適化がかかって効率化していくという動きも主流になっています。しかし、今回のように予算が限られた立ち上げ期では、十分なデータが集まる前に予算を使い切ってしまうリスクがあります。
そこで今回ご提案したのが、AIで100人の仮想ユーザーを生成し、配信予定のLPに対する反応を計測するシミュレーターの構築です。事前の擬似的なテストマーケティングでLPを磨き上げたうえで実際に広告費を投じて広告を配信し、初速を最大限に高める狙いがありました。
この施策のキモは仮想ユーザーの精度、つまりどこまでペルソナの解像度を高められるかです。これまで私は広告運用を通じ、ユーザーを自分に憑依させて考えるノウハウを書籍や実体験から学んできました。今回のチャレンジでは、根源的な欲求やペルソナ設計の鉄則、男女別の売り方など、自分の脳に蓄えてきたノウハウをAIに渡し、ユーザーを生成させています。
テストマーケティングで得られるデータからは、年齢や性別、検索キーワードこそ分かりますが、「検索する」という行動の背景にある感情までは分かりません。そこで「配信前配信」では、推測される感情からLPに対するコメントを好き放題言ってもらうようにしました。もちろん、このデータ自体は絶対に正しいとは思いません。得られたデータの中に「自分に見えていなかった視点」がひとつでも発見できれば成功だとみなしていました。
具体的には、まず望月さんから「SEOで1位を取れるならどのワードか」という主要なキーワードを伺い、その検索クエリに出稿している競合のLPと「Spekan」のトップページを並べて、100人の仮想ユーザーに「あなたならどちらのサービスを選ぶか」と質問し、その反応データを収集しています。得られた反応データで、望月さんの印象に残っているものはありますか?
望月:「なんとなくいいけど、今じゃないかな」という仮想ユーザーからのコメントが、未だに印象に残っていますね。施設運営者の感覚としては確かにリアルで、AIからこのようなコメントは出てこないだろうと思っていました。AIはイエスかノーか、必ず結論を導くようなイメージがあったので、先延ばしにするという選択は、すごくリアルです。
こうしたリアルなコメントを受けて、全施設向けの広い訴求ではなく、まずはレンタルスペース、シミュレーションゴルフ、スポーツジムの3つの業種に絞ってLPを作り込むことになりました。それぞれの業種ごとに共通した困りごと、「Spekan」をどのように活用できるかというメッセージをLPのファーストビューに盛り込みました。
改めて高橋さんに「配信前配信」で検証していただいたところ、従来のトップページで集客するよりCVRが約4倍高く出るという予測が出ました。「これならいけるのでは」と手応えを感じ、限られた広告予算を高橋さんに託し、いよいよ本番の広告配信をスタートしました。
配信開始の翌朝に最初の問い合わせ。検証期間は2ヶ月から20日に、上場企業との商談も創出

高橋:「配信前配信」によるAIシミュレーションとLP改善を経て、2026年8月には満を持して広告配信を始めました。夜には広告入稿を終え、朝起きて祈りながら管理画面を開いたところ、すでに最初の問い合わせが入っていましたね。広告運用に携わって十数年は経ちますが、リリースされたばかりのサービスで初コンバージョンに立ち会った経験は、今回が初めてです。
望月:率直に、嬉しかったですね。構想から数年間も準備してきたサービスが、ようやく世の中に受け入れられたような気持ちになりました。興味を示して行動してくれた人がいるという事実に安心しました。
高橋:「配信前配信」のAIシミュレーションは商用化しているものではなく、まだ試作段階ですがうまく「Spekan」と噛み合って数週間で成果につながったことが純粋に嬉しかったです。
数週間配信してもコンバージョンが出ないことは、この仕事では珍しくありません。しかし今回は10クリック未満で最初のコンバージョンが出ています。これはたまたまではなく「あなたのために用意した」と仕掛けたLPに、その人が反応してくれた結果だと考えています。従来なら1〜2ヶ月配信して誰もコンバージョンしないループを繰り返し、そこからLPを直してまた配信する。検証に2ヶ月かかるところを、今回は20日以内で終えています。
望月:1回目の「配信前配信」の検証で「CVが競合他社に流れ、結果が出そうではない」というレポートが出てきて、それが自分の感覚値とすごく近かったのです。このままではダメだろうと思いながら、業種特化型LPを3パターン制作してみると、「CVRが約4倍高く出る」という予測が出たので、信憑性がありました。
高橋:問い合わせをいただいた施設運営者との商談はいかがでしょうか?
望月:実はその後、広告経由で上場企業のご担当者さまからお問い合わせいただき、商談が進んでいます。すでにPoCのフェーズに入っており、実際の施設で問題なく予約ができるかテストしていただいています。「どう設定するのが良いか」と、導入後の業務フローを想定した内容をご相談いただいており、プロダクトとしての手応えを感じますね。
AI時代、「その人にしか出せない独自の価値観」をもつパートナーと仕事がしたい

高橋:取り組み全体を振り返って、どのように評価いただいていますか?
望月:前職でご一緒した当時は生成AIが出始めたばかりで、高橋さんも最初はどこか懐疑的な、むしろ反対派でしたよね。ところが今回の取り組みで「配信前配信」のAIシミュレーションを見せていただいたら、かなりAIを活用されていて(笑)。とても驚きました。
AIに指示を出せば、一見整っているアプリケーションを簡単に制作できる世の中になりましたが、「配信前配信」のAIシミュレーションは高橋さんが積み上げてきた知見、特に「ユーザーを憑依させて考える」という視点がないと実現できなかった施策だと思います。
高橋:ありがとうございます!改めて、今後の展望について教えてください。
望月:施設をどの場所に立ち上げるかを決めるところから、事業として利益を出すところまで。最初から最後までを支えるサービスとして、「Spekan」を広めていきたいと考えています。そのために、広告はこれからも積極的に活用していきたいですね。
ただ、同じ業種の施設でも、事業のフェーズや立地によってもターゲット層は変わってきます。「Spekan」を誰に届けるのか、今後も高橋さんと相談しながらその都度見極めていきたいですね。
広告の数字には上下動があり、どうしても一喜一憂してしまいがちです。高橋さんは、今月と来月の件数を比べるのではなく、将来やりたいこと、実現したい成果から一緒に考えてくれるパートナーなので、この関係をこれからも続けていただきたいと思います。
高橋:最後に、マーケティング施策に悩む企業の担当者へ、アドバイスをお願いします。
望月:新規事業やサービスの立ち上げにおいて、時間や予算の制約はもちろん存在します。しかし、多様なツールが揃う現代は、昔に比べればはるかに挑戦しやすい時代です。
その一方で、従来通りの型から抜け出せていない方法を続けていては、顧客から「それならAIで十分」と判断されてしまいます。単純作業や標準的なアウトプットであれば、自社で行うかAIを活用した方が合理的だからです。
そうした時代だからこそ、私は「人にしか出せない独自の価値」をもった方と仕事をしたいですし、自社にそうしたパートナーがいなければ内製化を進めるべきだと考えています。THE MOLTSには、まさにそうした本質的な強みを持ったメンバーが揃っていますので、マーケティングでお困りの方は、相談してみてはいかがでしょうか。
高橋:ありがとうございました!
担当者

Marketing Project Lead
高橋 翔太
SHOTA TAKAHASHI
業界歴10年以上。ディスプレイ広告の専門性を軸に、リスティング広告を中心とする運用型広告の代行、KPI構築、インハウス化支援を担当。企業の広告担当としての既存代理店との折衝にも従事。
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