マーケティング予算配分の適切な考え方とは?成功事例や2021年以降の動向を解説

山﨑 篤史

Marketing Strategist

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マーケティング予算配分の適切な考え方とは?成功事例や2021年以降の動向を解説

2020年、新型コロナウイルスの影響により、国内外の多くの企業でマーケティング予算は縮小する流れが見られました。そんな中、限られたマーケティング予算をどのように配分するかは、企業の経営を大きく左右する要素です。

本記事では、マーケティング予算を最適に配分するために重要な考え方や、実際の企業の成功事例について解説します。

コロナ禍でマーケティング予算は本当に縮小していくのか?

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、消費活動の停滞や消費者のニーズの変化など、多くの業界・業種においてマーケティング活動に大きな影響が出ています。

9割以上の企業がマーケティング活動への影響を実感

アジャイルメディア・ネットワーク株式会社が、2020年5月に企業のマーケティング担当者・責任者に実施した「コロナウイルスの感染下におけるマーケティング活動調査(調査対象159社)」によると、全体の約98%にあたる156社が、新型コロナウイルスが企業のマーケティング活動に影響を及ぼしたと回答しました。

また、影響があったと回答した内訳としては、「予算削減やリプランニング(75%)」「プロモーションの停止(75%)」が上位に挙げられています。

コロナ禍前に描いていた戦略をどうしてもピボットせざるを得ない状況に、多くの企業が追い込まれたことが伺えます。

オフラインだけでなくデジタル広告も縮小の流れ

これらのマーケティング予算の縮小の流れは、店頭販促やイベント・交通広告といったオフライン・リアルの場の施策だけでなく、デジタル広告においても見られます。

米ニューヨークに拠点を置く市場調査会社eMarketerが、2020年7月に公表したデータによると、世界のデジタル広告の支出は、過去最低の2.4%成長に留まりました。

2019年のデジタル広告の支出の伸びが15.9%だったと考えると、デジタル広告も新型コロナウイルスによる影響を強く受けたと言えるでしょう。

一方で、大企業・中堅企業では予算拡大の流れが見られる

一方で、企業の規模によってはマーケティング予算がむしろ拡大されているというデータがあります。

株式会社電通の連結子会社にあたる電通インターナショナル社(Dentsu International Limited)が世界の主要12市場のCMO(最高マーケティング責任者)1,361名を対象に実施したアンケートによると、「今後1年間で、マーケティング予算がどう変化しますか?」という問いに対して、大企業のCMOの約38%、中堅企業の31%が5%以上予算が拡大されると予測しています。

規模感大企業中堅企業小規模事業者
5%以上の拡大38%31%13%
5%未満の拡大16%15%6%
変化なし14%11%34%
5%未満の縮小12%17%6%
5%以上の縮小20%27%41%

このように小規模事業者は、マーケティング予算が縮小する流れが強い一方で、中堅企業・大企業では、新柄コロナウイルスを投資のチャンスと捉えて、マーケットシェアを拡大していく流れが見られます。

コロナ禍だからではなく、目標への貢献度に応じて、予算分配を最適化する

将来的なマーケットへの影響が読みにくい「未知のウイルス」ということもあり、マーケティング予算の支出に消極的になっている企業も多くあります。

しかし、マーケティング予算は、組織の目標に対する各マーケティング施策の貢献度によって、決めるべきものであり、常に最適な分配を目指す必要があります。

もちろん、オフラインを基点とするビジネスなど業界自体が著しくシュリンクしている場合は、マーケティング予算を縮小せざるを得ないケースもありますが、影響が限定的なのであれば、「コロナ禍だからという理由で予算を縮小するのではなく、コロナ禍だからこそ、施策の貢献度を今いちど明確にし、最適な予算分配に目を向けていく」ことが求められます。

例えば、テレワークの実施やイベントの開催規制が政府主導で進む中、交通広告やイベント・ポップアップストアといった従来投資していたマーケティング施策から、「SNS広告 / アカウント活用」や「eコマース」に積極的に予算分配する企業が増えています。

実際に、新型コロナウイルスの影響でSNSの利用時間が増えたユーザーの中には、従来よりも企業公式アカウントの投稿を目にする機会が増加し、「公式アカウントのキャンペーンの参加」や、「公式アカウントの投稿にいいね・リツイート」する回数が増えたと回答するユーザーも多く見られます。

このように急激に変化するマーケットの状況を、マーケティング担当者がしっかりと理解し、従来のマーケティング施策に捉われずに、新たな施策にチャレンジしていく体制が必要になってくるでしょう。

マーケティング予算の分配を最適化させるための考え方

ここからは、具体的にマーケティング予算をどのように最適に分配するべきか、その考え方をステップごとに解説していきます。

STEP1:現状のマーケティング施策の課題の洗い出し

予算分配を考える前に、まずは現状のマーケティング施策のどこに課題があるのかを明確にしましょう。

例えば、購入確度の高いユーザーの刈り取りを目的として、リスティング広告を運用している場合、現状で目標としている成果(顧客の獲得)が達成できているかを判断します。

仮に、目標とする成果に達成していないのであれば、ターゲットやキーワードの選定、入札方法など、既存の刈り取り施策の精度を高めていく必要があります。

一方で、すでに施策の最適化がなされているため、コンバージョン数などの成果に変動がない場合は、既存施策で刈り取れるユーザーの上限に達している可能性があります。

リスティング広告に加えて、

  • SNS広告やディスプレイ広告など新たな媒体へ出稿してみる
  • 目標のCPAやROASのバー下げられる余地があるか検討する
  • 刈り取りではなく認知を広げるための新規施策へ投資する

ことを考えるべきでしょう。

STEP2:新規マーケティング施策への予算分配

次に、限られた予算をどう配分するかを決めていきます。

新規マーケティング施策に、予算を投下する場合は、既存施策であまり効果が出ていない部分を辞めて、その分を新規施策の予算に充てる方法がおすすめです。

例えば、既存でリスティング広告を運用している場合、獲得ができているキーワードと獲得ができていないキーワードが存在します。獲得できていないキーワードへの出稿を辞めて、新規施策に投資することで、全体のバジェットを変えずに新規施策にチャレンジすることができます。

STEP3:マーケティング施策の成果の検証

新規のマーケティング施策の検証をする際に注意をしたいのが、結果だけに一喜一憂しないということです。よくあるケースが、新規施策を始めたものの「目標のCPAに達成しなかった」「思ったように顧客を獲得できなかった」という理由で、施策を辞めてしまうケースです。

新規施策を始める時に失敗はつきものです。なぜ目標のCPAに達成しなかったのか、また顧客獲得に至らなかったのか、その原因から新たな仮説を立てることで、マーケティング施策の改善に活かしていくことができます。

なお、新しいマーケティング施策の成果を検証する際には、一定のコンバージョン数やクリック数を担保する必要があります。例えば、運用型広告の場合、一定のコンバージョン数が発生しなければ、媒体の機械学習の精度が向上しません。

1ヶ月経ったけど効果が出ないから辞めるのではなく、検証しうるコンバージョン数が発生しているのかといった観点で成果を見ていく必要があるでしょう。

マーケティング予算の適切な分配で成果を出した企業事例

ここからは、マーケティング予算を適切に分配することでその成果をあげた事例をいくつかご紹介します。

新規施策への取り組み|認知拡大を目的としたSNS広告の活用

一つ目は、現状のマーケティング施策の「認知力の弱さ」という課題を発見し、別のアプローチを実行することによって、新規顧客を開拓した成功事例です。

飲食店のWEB予約やテイクアウトサービスを提供するA社では、グループで日本最大規模の会員数を誇るがゆえに、会員へのメールやグループサイトにおけるバナー掲載などに終始していました。一方で、新規ユーザーが思うように獲得できていないといった課題を抱えていました。

また、ビジネスモデル的に1回あたりの利用単価が安く、新規獲得コストも抑えなければならない状況であり、なかなかマーケティング施策に投資できないことがボトルネックでした。

しかし課題の洗い出しをしていくなかで、一定回数利用した既存顧客の継続利用率や平均単価が高いことを発見。LTVの観点からマーケティングコストをかけることで、新規顧客の開拓、売上・利益貢献がつながる見込みあることがわかりました。

そこで、新たな広告施策としてTwitter広告を活用したキャンペーンを開始。潜在的にニーズを抱えているユーザーに対して、飲食店のクーポン情報を掲載した広告を配信し興味を持ってもらい、SNSを通じて接点を持つことによって、目標としていた新規顧客数の2倍の成果獲得を成し遂げました。

また、Twitterという媒体の特徴と、クーポンの相性が良かったことから、広告を見たユーザーがリツイートなどの二次的な拡散を行なったことで、CPAを大幅に削減することにも成功しています。

従来施策への取り組み|既存顧客へのメルマガ配信

次に、新規顧客の獲得ではなく、既存顧客にアプローチすることによって、事業目標を達成した成功事例です。

ECサイトを運営するB社では、テレビCMやリスティング広告といった施策を活用し、新規顧客を獲得、多くの既存顧客を抱えているものの、なかなか商品購入のリピートに至らないという課題を抱えていました。

そこで、すでにリードを獲得している既存顧客に対して、定期的なメルマガの配信を開始。性別や年齢・過去に購入した商品でセグメントをかけて、適切な商品やクーポン情報を発信することで、休眠顧客の掘り起こしや、購入頻度のアップに成功しました。

結果的に、顧客のLTVを高めることで、売上が1年間で2倍に向上という成果をあげています。

つまりこれらの事例から、マーケティング予算はあらかじめ決められた施策に合わせて確固として決めておくのではなく、そもそもの施策への投資効果を疑い最適化させ続けることが大切だということが学べます。

マーケティング予算を適切に分配するために意識すべき4つのこと

最後に、デジタルマーケティングエージェンシーとして日々さまざまな企業のマーケティング予算戦略に関わらせていただいている弊社の観点から、マーケティング予算を適切に分配するために意識すべきことをお伝えします。

1. 施策の「目的」と「成果指標」を明確にする

マーケティング施策は、ただ闇雲に実行するのではなく、最終的にどんな成果を得たいのかという事業目標(KGI)から逆算して考えていく必要があります。

マーケティング施策の目的は、企業や事業のフェーズによって様々です。「新規顧客を増やしたい」「既存顧客のLTVを高めたい」「認知力を拡大したい」「ブランドイメージを向上したい」など、それぞれの目的によって、実行すべきマーケティング施策は異なってきます。

また、明確にした定義に基づいて、成果指標(KPI)を設計するのも非常に重要です。最終的なマーケティング目標であるKGIを達成するためには、どの成果指標を据え置き、モニタリングしていく必要があるのかを明確にしましょう。

2. 過去のデータを振り返る

必ず、過去に行なったマーケティング施策のデータを振り返り、課題点を発見しましょう。過去データには、新たな施策を成功に導くヒントが多く隠されています。

例えば、過去に配信した広告のクリック率やコンバージョン数はどれくらいだったのか、どのクリエイティブの反応が良かったのか、ROIやROASがどのような結果になったのか、など最終的に失敗に終わった施策であっても、新たな施策立案の仮説に使うことで、成功率を高めることができるでしょう。

3. 固めすぎず柔軟に対応できるようにしておく

新たなマーケティング施策を実行する時に、当初の仮説がそのまま上手くいくケースは多くありません。これは予算配分に関しても、同様のことが言えます。

例えば、運用型広告に300万円、オウンドメディアマーケティングに200万円予算どりをしていたとしても、いざ施策を始めて見ると、オウンドメディアマーケティングの方がROASが高く、成果に紐づいていることが分かったケースがあります。

予算や施策をがちがちに固めすぎてしまうと、当初の仮説からずれた時に、柔軟に対応することができません。マーケティング施策は、やってみないと分からないということを念頭に置き、成果をみながら柔軟に予算配分ができる体制を作ることが大切です。

4. 流行りに流されない

マーケティング施策には流行りが存在します。最近では、YouTubeをはじめとする動画広告が界隈で取り沙汰されていますが、最新の手法が目的を達成するための、最適な手段とは限りません。

YouTube広告は、ユーザー数が多く、動画を使ってユーザーに訴求ができるため、ブランドや商品の認知拡大に大きく貢献します。その一方で、クリエイティブの制作に費用や時間を要することや、リスティング広告などと比較すると、必ずしも刈り取り施策に適しているとは言えません。

「流行っているからやってみる」のではなく、事業目標を達成するために最適な手段なのかを、各施策のメリット・デメリットを理解した上で判断する必要があるでしょう。

まとめ|マーケティング予算の配分は、成果に応じて柔軟に変化させていくことが大切

本記事では、コロナ禍においてのマーケティング予算の見通しや、マーケティング予算を最適に分配するために重要な考え方、具体的な企業の事例について解説しました。

マーケティング予算の分配を決める時は、まずはなんのための施策なのかを明確にした上で、適切なKPIを立てていく必要があります。その後に施策を実行し、効果を検証することで、適切に予算を配分することが求められます。

初めから〇〇万円と予算を決めてしまうのではなく、ある程度の予算を確保しながら、柔軟に変化させていきましょう。

この記事を書いたメンバー

ATSUSHI YAMAZAKI

山﨑 篤史

Marketing Strategist

1978年生まれ。大学卒業後、DM会社を経験後、株式会社アイレップにてアカウントプランナーとして大手通販会社などを担当し、SEM、SEOを中心に成果に貢献。2010年に株式会社オークローンマーケティングに入社。Eコマースの集客担当マネージャーとして、トリプルメデャアを活用した売上向上に貢献。その後、チューリッヒ保険会社にてホールセール事業のデジタルマーケティング領域の推進ののち、株式会社EPARKにてクロスユースのためのロイヤルカスタマー施策・企画などを担当。2020年10月にMOLTSに参画し、子会社KASCADEに所属。

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