AI時代にデザイナーはどうあるべきか?に対する私なりの答え

こんにちは。マーケティングエージェンシー「THE MOLTS」のデザイナー、藤牧です。

私は20年以上クリエイティブ業界に身を置き、デザイナー、アートディレクターとしてさまざまなクリエイティブに関わってきました。(よければポートフォリオをご覧ください)

そんな私に先日以下のような記事が共有されました。

日本経済新聞「デザイナーの78.8%、AIを毎日利用 キャリアに不安50.9%」

これに対して、社内から「藤牧さんの考えを記事にしてみては?」とオーダーが来まして。

私は約1年半前から、現代表の寺倉をはじめとする少人数のチームで、AIをベースにさまざまなプロジェクトに取り組んできました。

その経験を踏まえた見解を書いてほしい、とのことでした。

私自身、正直以前は不安を感じることもありましたが、今はなく。また、私はこの先どうあるべきかについては、一応の答えが…あります。

世界には素晴らしい考えが様々にあり、どれも学びになります。

その中でこの記事は、あくまで、現時点の無名の私の考えですので、こういう視点もあるのか程度にお読みいただけますと幸いです。

約1年前に取り組んだ転機となったあるプロジェクトの話

デザイナー個人の話の前に、あるプロジェクトについてお話しさせてください。

従来4ヶ月かかる自社のサイト制作を、10日でリリースする

約1年ほど前、ある自社サイトをリリースするプロジェクトが立ち上がりました。

ミーティングで「従来4ヶ月かかるが、クオリティを落とさず、AIをベースにすればどれくらい速くできるか」と問われ、私は「3ヶ月」と答えました。

一人ひとりの作業プロセスをAIで短縮すれば、3ヶ月が妥当かなと考えたのです。

すると、「8日でリリースしましょう」という声が上がりました。

私は全くイメージが湧かずにいたのですが、そこから「社内のプロジェクトなので失敗してもいいが、トライすることから逃げない」ことを前提に、「実現のために何をどうしないといけないのか?」という議論が行われました。

当時は、ディレクターやフロントエンド担当を外して人数を減らしたり、フィードバックの回数を増やしたり、30分の待ちをなくすために承認稟議をなくしたりしました。

結果として、8日では無理でしたが、納得のいくサイトを10日でリリースできました。

もともとこのプロジェクトの前から、コーディング、バックエンド、プロジェクト管理、そしてAIを用いたデザインなどを学んではアウトプットすることがありました。

しかし、実際にAIがなければたどり着けなかったプロジェクトは、これが初めてでした。今ならもっとクオリティ高く、速くできるとは思いますが、価値観が変わるいい体験でした。

従来よりも速く、従来よりも多くのパフォーマンスを創出する

なぜそのようなプロジェクトが立ち上がったのか。その背景には、私たちチームが定義していた考えがありました。

元々、アートでなく、クリエイティブに対する私たちの考え方は以下でした。

  • ビジネス上で求められたパフォーマンスを創出するためにクリエイティブがある
  • なので、コンテンツやデザインなどのクリエイティブそれ自体で価値は測らない
  • パフォーマンスが創出されてはじめてクリエイティブに価値が生まれる

そしてAI時代においては、クリエイティブでなく、プロジェクト全体に対する考え方として、以下が徹底されています。

  • 従来よりも速く、従来よりも多くのパフォーマンスを創出する

例えば今回のケースでいうと、目的は「新しいサービスの相談件数を最大化する」でした。目的を達成するには、リリース後の運用・改善が必須。

そのため10日でリリースできれば、従来は120日(4ヶ月)後にしか始められなかった施策を、1/12の期間で開始できます。

仮に、従来は1年後にサイト経由で月30件の相談を獲得する目標があったのであれば、それを6ヶ月後に月60件にする、といったように、半分の時間で倍の成果を創出する可能性が高くなります。

私たちが見ているのは、あくまでパフォーマンスを従来より速く、従来より多く創出すること。そのために、私を含めて、各人がどうすべきかを常に考えてはトライすることを続けてきました。

デザイナーの私は、1年半でどう変わったのか

では実際に、私の仕事が今どう変わったのかについて、少し書いてみたいと思います。

もともと私は、アートディレクターとして全体を設計し、表層のデザインに落とし込むまでを役割とすることが多かったです。

それから1年半、私の仕事は以下のように変わりました。

業務範囲は、デザインだけでなく、進行からリリースまでの全業務へ

プロジェクトを推進する人の数やコミュニケーションの本数は、遅延の要因になります。

そこで、プロジェクトに関わる人をどれだけ減らせるかを突き詰めた結果、デザインだけでなく、サイトリリースまでの管理、リリース後のデータを見た上での対応、コーディング、バックエンドまで、要件によっては一人で全て担当することが基本になりました。

もちろん、セキュリティやエンジニアリングなどのスペシャリストと連携したり、アドバイスをもらったりすることもありますが、基本は私一人で完結します。

私がデザインせず、マーケターがデザインできる仕組みの構築へ

プロジェクトをより加速させ、よくしていこうとすると、マーケターがわざわざ私に依頼して制作することがロスタイムにつながります。

そのため、プロジェクトごとに、マーケターがLPやバナー、サイトなどのクリエイティブを自由に組み立てたり改善したりしても崩れない仕組みを作ります。

私が関与しなくても、クオリティを担保した改善ができるようにすることをもう半年以上前から取り組んでいますが、これによって一気にプロジェクトが加速する場面が増えています。

クリエイティブ領域の業務効率化をする機能の実装へ

わかりやすく言えば、それぞれのマーケターの組み立てプロセスを理解した上で、情報を組み合わせることで、ゼロベースで構築しなくてもLPの初稿が15分でできるような機能を作ります。

スライド、LP、広告クリエイティブなどで、プロジェクトごとに実装したりします。

こうした機能は、AIリテラシーが高いマーケターなら自作することも多いですが、そうでない場合には重宝されます。また、改善をより自動化するプロジェクトなどに組み込むこともあります。

デザイナーであることを大切に、でも縛られてはいけない

世界はどんどん前に進んでおり、プロジェクト自体を改善したり組み立て直したりしながら、どうすればより良くなるのかを議論する日々が続いています。

そんな中で、1年半前に比べて、私の仕事は大きく変わったなと改めて思います。

最も変わったのは、20年以上私を表し続けた「デザイナー」という職種や、これまでの役割を起点に考えるのをやめたことです。

シンプルに、プロジェクト全体をより良くするために私ができることは何かを考え続けた結果、仕事が変わったように思います。

「作れる」ことの価値が薄れていく中で

その考え方のシフトには、チームでよく議論していた「作れることの価値が薄れていく」というテーマがありました。

私がAIを触りはじめた時、ClaudeのSonnetは3.6でした。当時から、どうすれば私が求めるクオリティを作れるのかという視点を持って、さまざまな失敗と組み立てを繰り返してきました。

今、5.5になって、当時の失敗は仕組みを作らなくてもなくなっていき、組み立てが容易になってきており、日に日に作れる価値の薄れを感じています。

一方で、多くの人が「作れる」時代になっても、最終的にビジネスを最大化するパフォーマンスが出せるのかというと、話は別だと考えています。

マーケターの仕事をさまざまに見る機会がありますが、やはり餅は餅屋。私が広告やサイトグロースを担当したとしても、彼らには敵わないと信じられる世界があります。

だから私は、デザイナーとして「作れる」ことの価値よりも、プロジェクトのパフォーマンスの最大化に貢献することを選びました。

どうあるべきか?に対する私なりの答え

そのような背景をもって、AI時代にデザイナーはどうあるべきか?という問いに対する私なりの答えをまとめると「デザイナーという職種でなく、プロジェクトを最大化する役割に徹する」でしょうか。

フルスタックという言葉がより使われるようになりましたが、フルスタックになろうでなく、結果としてそうなっていくもののように感じます。

また、デザイナーとしてのキャリアに不安を感じるかというと、ゼロではありませんが、ほとんどありません。

それよりも、不安を感じたり悩んだりする暇がないほど、周りが加速度的に成長していく中で、自分がどう貢献し、学び、価値を発揮するかを考えることしか、あまり見えていないというのが正直なところです。

本当は不安かもしれない、でもそれを凌駕するエキサイティングさが、そう感じさせていないだけかもしれません。

ここまで、あくまで無名の私なりの、そして現時点の答えをつらつらと書いてきました。

世界がすごい速さで進化する中で、私も、チームもどんどん前に進む必要があります。1年半後にまた同じテーマで記事を書いた時には、全く違う内容になっていてもおかしくないと思います。

拙い内容、拙い文章ですが、少しでも、誰かの参考になれば幸いです。

著者情報

藤牧 篤

Creative Project Lead

藤牧 篤

ATSUSHI FUJIMAKI

プロダクション数社で、デザイナー、アートディレクター、クリエイティブディレクター、デザイン部門マネージャーを歴任。当初は自社事業開発を中心に、現在はクリエイティブから開発まで横断的に支援。

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