「利益拡大のためインハウス化を決断」から3年で、広告運用チームはどう変化したのか

「利益拡大のためインハウス化を決断」から3年で、広告運用チームはどう変化したのか

コロナ禍で一気に需要が増したオンラインイベントやウェビナー配信、Web会議の導入支援、そして防音個室ブース「テレキューブ」を手掛ける株式会社ブイキューブ。「Evenな社会の実現」をミッションに掲げる同社では、顧客から要望に応える形でバーチャル株主総会など、非常に多岐に渡る商品やサービスを展開しています。

多彩な商品・サービス群をより多くの顧客に届けるため、また、企業としての利益を確保していくため、同社のBtoBマーケティングでは2019年より広告運用をインハウス化しています。しかしこれまで広告代理店に広告運用を委託していたため、社内に広告運用の知見やノウハウがなかったことから、MOLTSにご相談をいただきました。

そこで今回、ブイキューブの事業企画本部マーケティングコミュニケーショングループの川本さまと池下さま、本プロジェクトを担当したMOLTSの松尾 謙吾が、これまでの取り組みを振り返りました。

Marketing Strategist / Consultant
松尾 謙吾
業界歴14年。マーケティング戦略、広告運用、クリエイティブの作成とデジタルマーケティングをトータルで担当。顧問、代理店への教育などにも従事。

利益を確保しつつ、ユーザー目線の広告運用を実現するため、インハウス化を決断

事業企画本部 マーケティングコミュニケーショングループ 第2チーム チームリーダー 川本 さま

松尾:MOLTSでは、広告運用のインハウス化を支援するための取り組みとして、コンサルティングサービスを2019年よりご提供させていただきました。まずはご相談いただいた背景として、当時の状況とそもそも広告運用のインハウス化を目指された経緯をお聞かせください。

川本:2019年以前は、広告代理店さんとごく一般的な広告運用をお取り組みをしていました。代理店の担当者の方が広告を運用し、毎月の成果をレポートで報告、必要に応じて施策を工夫する、といった取り組みです。

広告代理店さんとの取り組みが長く継続していたこともあり、私がマーケティング担当に配属された際には、「広告代理店としてはやることは全部やっていて、これ以上成果が改善することはないです」といった提案内容でした。つまり、これまでとほとんど同じ広告運用を、今後も横ばいで続けていこうという状況だったのです。

そうした状況で2018年頃より、今後は会社の利益をより多く確保していくため、全社規模で構造改革を進め、その一環としてマーケティングコミュニケーショングループでは外注費を削減していくこととなりました。その際にコンテンツの制作や広告運用をインハウス化していくことが決定しています。

松尾:MOLTSに広告運用のインハウス化をご相談いただく以前は、どのようなアクションを取られたのでしょうか?

川本:まずは当時お付き合いしていた広告代理店さんにご相談し、広告運用の自走化支援をお願いしました。コンサルティングというよりは広告運用の研修に近いイメージの自走化支援で、2週間に1回程度「Googleとは?Yahoo!とは?」「管理画面の操作方法」といった内容の研修を、計6回ほど受講しています。

しかし、オペレーションは問題なくできるようになったものの、どうすれば成果を改善できるのかといった思考については、十分に習得できていませんでした。私が広告運用の担当になった頃には、すでに各キャンペーンが設定されており、一定の成果も出ている状態で、下手にいじると効果が悪くなるかもしれないと感じていたのです。そのため、当時はただただ現状の広告運用を続けるしかありませんでした。

松尾:ちょうどそのタイミングでブイキューブさんから弊社にご相談いただきました。当時のマーケティング本部長の方から、Webサイトのアクセス解析やコンテンツ領域のご相談と同時に、広告運用のインハウス化を実現したいとお話を伺いました。

川本:MOLTSに広告運用のインハウス化支援をお願いした決め手は、施策単位ではなく、マーケティング全体を全方位で支援してくださることだったと聞いています。広告運用についてご相談したところ、「経営視点からそもそも計画全体の見直しの必要性もある」と、これまで受けたことがないアドバイスをいただき、取り組みを決定しています。

代理店による広告運用から、週一の定例会でインハウス化を実現するまで

事業企画本部マーケティングコミュニケーショングループ 第2チーム 池下 さま

松尾:取り組みが始まった当初、最初の1年目は毎週1回の定例ミーティングを実施させていただきました。定例ミーティングでは、課題や困りごとをヒアリングし、その内容を受けてのコンサルティング、アドバイスを行い、次回の定例ミーティングまでの宿題を出す、といった流れが基本でした。取り組み当初で印象に残っていることはありますか?

川本:一番最初のミーティングでは、リスティング広告の目的を改めて定義し、そのために必要な施策やアクションを整理しています。そもそも広告運用の目的を考えたことがなかったのですが、松尾さんからのアドバイスをきっかけに、広告を届けるユーザー目線で広告施策を考えるように意識し始めました。ターゲットであるユーザーが何を考え、どのようなアクションを取るのか、そして自分たちはどのような広告を出すべきなのかと、今でも施策を考える度に、ユーザー目線を大事にしています。

松尾:初めて自分自身で広告を運用するには、正直不安もあったと思います。お取り組みのどのタイミングで不安が解消されましたか?

川本:最も不安に感じていたのは、CPAやCPCといった広告運用における指標の相場が分からず、現状の数値が良いのか悪いのか全く分からなかったことです。定例ミーティングの中で、何度も「相場はどのくらいでしょうか」と聞き続ける中で、だいたいの相場感を身につけることができ、次第に不安は解消されていきました。

松尾:取り組み当初から様々な施策を進めましたが、特に効果があったと感じる施策を教えてください。

川本:まず、リスティング広告のアカウント構造を見直したことです。これまで広告代理店さんにお任せしていたので、なぜキャンペーン名の命名ルールが揃っていないのかも分からない状況でした。同じサービス名でも表記揺れが見つかり、今後広告運用を引き継いでいく上でも、まずはアカウント構造を整理することから始めています。

その他には、複雑になっていたコンバージョンタグの種類と粒度をしっかり分類しています。例えば「デモ」「トライアル」で別々の粒度になっていたコンバージョンタグを、同じ「問い合わせ」として分類し、粒度を揃えています。

最初の1年は様々なアクションがありましたが、特に時間がかかったのはサンクスページの整理でしたよね。1年のうち、数ヶ月はサンクスページの整理に費やしていたと思います。

松尾:ここまで複雑になっていたケースは珍しいです。コンバージョンタグの整理と関連して、サンクスページの一覧を洗い出していただき、同時期にWebサイトのアクセス解析に取り組んでいたMOLTSの西にも依頼して、サンクスページのGoogleアナリティクス設定や広告タグを整理していただきました。

川本:もう一つ印象に残っているのが、広告運用を根本的なところから立て直すため、思い切ってディスプレイ広告の配信を止めたことです。以前はリスティング広告とあわせてディスプレイ広告も実施していましたが、私のスキルと他業務との兼ね合いを踏まえ、まずはリスティング広告の改善にリソースを注ぐことになりました。マーケティング全体の広い視野から、まず1年目で改善すべきことの優先順位を付けていただき、とても助かりましたね。

2年目以降、リスティング広告以外の施策に着手。インハウス化を成功させたポイントとは

MOLTS 松尾

松尾:2年目の取り組みからは、営業からマーケティングに異動されたばかりの池下さんも広告運用の担当になりました。今振り返ると、当時はどのような状況でしたか?

池下:私自身、広告運用もマーケティング実務もまったくの未経験でした。そこでまずは、川本が松尾さんから1年目に教えられたことをインプットすることから始め、リスティング広告の運用方法を掴んでいきました。

ある程度リスティング広告の運用に慣れ始めた頃、刈り取り広告だけでなく、認知獲得を目的とした広告運用にも着手しなければと考えるようになり、これまで止めていたディスプレイ広告をはじめ、SNS広告もスタートさせています。

川本:当時は新型コロナウイルス感染拡大の影響で、多くの企業がウェビナー施策に取り組み始めたタイミングでした。弊社もウェビナーを開催するにあたって、まずはFacebook広告で集客していくことになりました。

その際にも松尾さんには壁打ち相手になっていただき、CPAやCPCの相場感を確認しながら、Twitter広告やタクシー広告、そしてYouTube広告まで施策を広げています。

松尾:当時の池下さんは定例ミーティングに対して、どのような印象を持っていましたか。

池下:松尾さんは厳しくありながら的確なアドバイスをしていただけるので、とても勉強になりましたね。「これは正しいですか」と質問すると、「池下さんはどのように考えていますか」と、まず自分の中に仮説を立てるように言われたことが印象に残っています。特にマーケティング部門の社内には、川本さん以外の先輩社員は10〜20歳も年上で、デジタル広告の運用経験がないため、厳しく追求するような言葉を言われることも少ないので、厳しい松尾さんの存在は嬉しかったです。

松尾:仮説を立ててから質問する以外に、定例ミーティングの生産性を高めるために意識していたことはありますか?

川本:1年目は私1人で広告を運用していたため、広告の成果を広告運用に携わらないメンバーに報告するためのレポートは作成していませんでした。しかし、池下が参画したことで運用する広告が増えたため、現状の数字を伝えやすいようにと定例会のためにレポートを作成するようになりました。今後、広告運用を後輩社員へ引き継いでいくためにも、レポートでナレッジを溜めていくことは有効だと考えています。

MOLTSとの取り組みで得られた、デジタル広告のインハウス運用ならではのメリット

松尾:今回は2019年12月からスタートした足掛け3年の取り組みでした。この3年を振り返り、どのような成果が得られましたか?

川本:取り組み以前に抱えていた課題である、広告運用のインハウス化をしっかり実現することができました。インハウス化を実現できた背景として、広告運用におけるPDCAを回せる体制を構築できたことが挙げられます。

松尾さんとの定例ミーティングから、結果を振り返るシートを作成したり、データ整理や入稿作業、バナー案の作成などの作業を習慣化したりと、少人数でも広告運用ができ、そして引き継ぐことができる仕組みを作りました。

また、ただ広告運用をインハウス化しただけでなく、インハウス化ならではのメリットが得られるように工夫しました。1つ目のメリットが、社内メンバーとの連携です。広告運用の専門性では広告代理店さんに分がありますが、お客様と常に接している営業や、社内のデザイナー、ディレクターとコミュニケーションし、そこで得られたインサイトを広告の出稿やクリエイティブに反映させることができたのは、インハウス化の大きなメリットだと思います。

2つ目のメリットが、会社の状況に合わせて広告費を柔軟に運用できることです。松尾さんからのアドバイスで印象に残っているものの1つに「成果を出すためならば、既存の広告運用以外のキャンペーンに広告費を投じるのも1つの手」という言葉があります。自分が広告担当だったこともあり、広告でできる施策を考えがちになっていたのですが、最終的に成果につながるのであれば、広告に執着しなくても良いと気付かされました。

広告運用の現場視点でなく、経営視点から成果を考えさせられた、普通の広告代理店さんからは出てこないアドバイスでしたね。実際、新たにタクシーCMの取り組みなどもこの3年間でスタートさせています。

松尾:今回の取り組みで、経営層とのコミュニケーションにどのような変化がありましたか?

川本:松尾さんからのアドバイスで、広告運用担当者と経営層、それぞれの視座が違うことに気付かされました。広告運用担当者はCPAの改善に努めますが、経営層とコミュニケーションする際には、そのCPA改善がビジネスにとってどのくらい利益に貢献しているのかを説明する必要があります。

どんなに頑張っていても、伝わらなければ意味がありません。MOLTSとの取り組みを通して、以前はただ広告代理店に任せ、上がってくるレポートを報告するだけだったものが、広告運用が会社にどのように貢献しているかを考えて報告するようになりました。

俯瞰した経営目線で施策を実行し、成果最大化に取り組んでいく

松尾:3年間の取り組みについてのお話をお伺いできましたので、取材の最後に今後の展望についてお聞かせください。

池下:まったくの素人から広告運用を始めることになりましたが、最近やっと後任に運用業務を引き継ぐことができました。引き継ぎが完了するまで、まだ体制や仕組みが整っていなかったこともあり、後任が挫折しかけたこともあったのです。しかしMOLTSとの取り組みの中で、引き継ぎのための運用シートや運用体制を立てつけることができ、いまでは後任担当自ら試行錯誤しながら広告を運用できています。

川本:広告はただ運用するのではなく、ビジネスにおいて非常に重要な施策であることを理解し、ビジネス目線で考えて取り組んでいくことが中長期的に大事だと思います。今後も弊社では、中長期的に利益になるかどうかを常に意識し、短期的な成果に左右されずに広告を運用し続けていきたいですね。

今後は広告に限らず、より幅広いマーケティング施策を含めて検討し、俯瞰した経営目線で施策を提案、実行していきたいですね。大きくなったチームのメンバーと連携し、マーケティングコミュニケーショングループとして成果最大化に今後も取り組んでいきます。

誰でも広告運用ができる体制が整い、自走して広告を運用できる状態を実現できたので、今回インハウス化の取り組みは終了となります。現在の広告運用の体制でどうしても解決できない課題が出てきたタイミングで、またご相談させていただけると嬉しいです。

著者情報

KENGO MATSUO

松尾 謙吾

Marketing Strategist / Consultant

業界歴14年。マーケティング戦略、広告運用、クリエイティブの作成とデジタルマーケティングをトータルで担当。顧問、代理店への教育などにも従事。

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