グロースハックとは|基礎知識から実践方法、フレームワークを紹介

この記事でわかること

  • グロースハックの基礎知識
  • グロースハックの実施手順
  • グロースハックのフレームワークと分析方法

「グロースハックとは何か?」「グロースハックに取り組むにはどうすればいいのか?」本記事をお読みの方の中には、このようなお悩みを抱えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

グロースハックとは、市場やユーザーニーズに合わせたサービス・プロダクト設計を行い、成長する仕組みをサービスに組み込むことです。

昔からよくグロースハックの成功事例として取り上げられている「Dropbox」の取り組みを考えると分かりやすいでしょう。Dropboxは、新規ユーザーの招待インセンティブとして無料データ容量を提供し、ユーザー自身が新規ユーザーを呼び込む仕組みを作ることで、広告を使わずにサービスを成長させました。

グロースハックをマーケティングと同義として考える方も多いようですが、サービスやプロダクトの開発からマーケティングまでを包括的に行う点で異なっています。

またグロースハックは、オウンドメディアや広告運用など各施策単位でそれぞれのKPIを追うのではなく全社で追うべきKGIを定めた上で、それに基づく「データ基盤の構築」や「部門横断的な権限を持ったチーム作り」が必要となるなど、取り組む上で気をつけなければいけない点があります。

本記事では、グロースハックの基礎知識から具体的な手順まで、網羅的に解説しています。また、内製で実施できるのか・外部パートナーに依頼する場合の考え方についても解説していますので、ぜひ最後までお読みください。

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グロースハックとは「サービス成長の改善に徹底して取り組むこと」

グロースハックとは、冒頭で解説したように市場やユーザーニーズに合わせたサービス・プロダクト設計を行い、成長する仕組みをサービスに施策として組み込みます

具体的には、マーケティングだけではなく設計の段階から関わることで、ユーザーが利用し拡散する仕組みを取り入れてサービスを成長させたり、ユーザーが継続利用するような仕組みを作ってアクティブ率やCV率を向上させるなどの取り組みです。

グロースハックは、当時10人程度のチームだったDropbox社を急成長させたマーケティング部門の責任者・ショーン・エリス氏が生み出した言葉です。

ショーン氏は創業から間もないDropboxに暫定CMOとして契約し、流入経路などの分析を徹底的に行い、顧客がより良い体験をできるようにテストを実施しました。

そして、友人からの招待が広告より効果的であることに注目し、招待インセンティブを導入。招待者は最大16GBの容量を無料で獲得でき、さらにいくつかのタスクを完了させることで、無料の容量を追加で得られるようにしました。

書籍「Hacking Growth(2018年9月発行/日経BP)」では、こうした体験を提供したことで、Dropboxは10万人程度だったユーザー数を、1年ほどで400万人まで伸ばすことに成功したことが紹介されています。ユーザー数が増加し、さらに多くのユーザーが知人を招待することで、広告を使わずにDropboxを成長させたのです。

グロースハックのプロセスはサービス・プロダクトを作るところから始まり、後述する手順で改善を繰り返します。

グロースハックの開発、評価・改善方法

必要であれば、サービス・プロダクトを作るところからやり直すこともあります。

近年グロースハックが注目される理由

なぜグロースハックが注目されているのかというと、近年はIT技術やAIが日々進歩し続けており、それに伴いサービスのライフサイクルが短くなっていることが要因です。

時間をかけて戦略を立てていると、サービス・プロダクト投入後すぐに市場が大きく変化してしまう可能性があることから、グロースハックが必要とされるようになりました。

グロースハックは先ほども触れたように、高速で仮説・検証・改善を繰り返します。そのため、1つのサービスやプロダクトを短期間で拡大し、より良くしていくことで顧客に長く利用してもらうことができるのです。

なお、グロースハックは2013~2014年ごろに、日本でも耳にするようになりました。DropboxやAirbnbなどの有名な事例もかなり以前のものであり、「もう古い手法なのでは?」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。

しかし海外に目を向けると、現在シリコンバレーではグロースハッカーが一般的な職種となっています。また、日本でもグロースハッカーの求人を目にするようになりました。

先ほども解説したように、近年はサービスのライフサイクルが著しく短くなっています。急スピードで変化し続ける市場にサービスやプロダクトを対応させ、競合よりも常に競争優位性を維持しなければなりません。

そのため、常にスピードを持って短期間でサービスやプロダクトをより良いものに改善するグロースハックは、古い手法ではなく、むしろ現代だからこそ必要なものであると言えるでしょう。

グロースハックではどのようなことを行うのか

グロースハックで具体的にどのような手段を用いて改善すべきなのかは、プロダクトや目的によって異なります。しかし、どのような方法であっても、段階に合わせた分析や改善が必要です。細かい手順は後述しますが、まずはグロースハックのイメージを深めるために、以下の全体像を参考にしてください。

段階改善内容
1.分析基盤の構築測定・分析手段の改善

・分析ツールの導入 など

2.プロダクトの機能改善部分的な機能の改善

・A/Bテスト
・入力フォーム最適化
・チュートリアルの改善
・UIの変更 など

3.プロダクトの設計変更全体に関わる改善

・CVまでの導線設計の変更
・全体デザイン刷新 など

4.グロース戦略の策定全体戦略の改善

・運用体制の見直し
・提供サービス
・プロダクトの価値の見直し など

「1.分析トラッキング」では、ツールで必要なデータをモニタリングして分析します。グロースハックでは部門ごとのKPIを追うのではなく全体のデータ基盤を整える必要があるため、場合によってはツール自体を変更する必要があるでしょう。

ただし、各部門で独立したデータ分析を行っていては、従来のエンジニアリング・マーケティングと変わりません。マーケティング施策の評価を開発に活かすためにも、部門間を超えたデータ基盤を整えることが必要です。

「2.機能改善」では、プロダクトの機能を部分的に改善します。例えば、A/BテストやLPO、ページのUI変更などです。単体の細かな部分に目を向けて、細かな改善と検証を繰り返します。

「3.設計変更」では、購入ページまでの導線変更や全体のデザインを刷新するなど、複数機能や全体に影響がある改善を行います。改善内容によっては、データベースの構成変更や、サーバーのスケールアップなども行います。

「4.戦略策定」では、適切なチーム構成を再考したり、プロダクトがユーザーにとってどのような価値があるのかを見直します。上述のDropboxが招待インセンティブによって、広告に頼らずユーザーが増加していく仕組みを取り入れたのも戦略のひとつと言えます。

プロダクト自体を根本的に改善するものではありませんが、戦略を見直すことでより効果的にグロースハックを行えるようになるでしょう。

このように、グロースハックはチーム構成からプロダクトの細かな改善まで包括的に行います。十分なデータ分析によって改善箇所を見つけ出し、場合によってはプロダクトそのものを見直します。

従来のマーケティングとの違い

グロースハックとマーケティングの大きな違いはその目的にあります。

マーケティングはサービスや商品の認知拡大や売上向上を目的とします。それに対し、グロースハックもマーケティングの手法は用いますが、サービス自体に成長する仕組みを組み込むため、サービスそのものの開発や改善にも取り組みます。

マーケティングとエンジニアリングを分業せず、持続的な成長を目的として取り組んでいくのがグロースハックです。

グロースマーケティングとの違い

グロースハックと似た言葉に「グロースマーケティング」というものがあります。グロースハックとグロースマーケティングの違いは、以下の通りです。

グロースハック

サービス自体に成長の仕組みを取り入れること

グロースマーケティング

マーケティング手法を組み合わせて、ビジネスの成長を促進すること

グロースマーケティングは、ビジネスを持続的に成長させるための、顧客との関係性を重視したマーケティング活動です。多岐に渡るマーケティング手法を組み合わせてLTVを最大化できるように努め、ビジネスの成長を促進します。

どちらも、持続的な成長を目指すための手法ですが、グロースマーケティングはグロースハックを実践していくための戦略であり、両方を組み合わせることが大切です。

グロースハックの2つのメリット

グロースハックを実施すると、以下のようなメリットが得られます。

グロースハックの2つのメリット
  • 低コストで事業を成長させられる可能性がある
  • 商品・サービスの品質を向上できる

実際にグロースハックを実施するかを判断するためにも、どのようなメリットが得られるのかを理解しておきましょう。

低コストで事業を成長させられる可能性がある

グロースハックでは、自社のサービスを低コストで効果的に拡散できる手法を取り入れます。例えば、招待制度やSNSを活用した拡散などです。

前述したDropboxも招待インセンティブによって大きくユーザー数を増やしました。また、「いちばんやさしいグロースハックの教本(2016年1月発行/インプレス)」では、日本のファッションアプリ「iQON」もグロースハックを実施し、広告費用を一切かけずに100万ユーザーの獲得に成功していると紹介されています。

Web広告を使用しないということではありませんが、グロースハックはより事業を成長させるためにも、費用対効果の高い仕組み作りが重要です。そのため、改善を繰り返す中で、費用対効果も向上していくでしょう。

商品・サービスの品質を向上できる

グロースハックは、データを根拠にプロダクトの開発・改善を行います。そのため、より市場やユーザーが求めるものを提供できるようになります。ニーズを満たせるように改善していくことで、サービスやプロダクトの質も向上させる効果も期待できるでしょう。

また、ニーズを満たして質を向上させることで、ファンやリピーターを増やすこともできます。

グロースハックは内製できるのか?

ここまでの解説を読み、「グロースハックを自社でも実践したいけれど、内製できるのか」という疑問を持った人もいるのではないでしょうか。結論からお伝えすると、グロースハックは内製化できますが、適切な人材とチーム構築が必要不可欠です。

人材を揃えて環境を整えられるのであれば問題ありませんが、そうでなければ知識のある外部パートナーに支援してもらうことも重要です。

では、グロースハックを自社で実践する際に理解しておくべきことについて、詳しく解説します。

幅広い領域に対応する知識やスキルが必要

グロースハックは、プロダクトの開発・改善から成長する仕組み作りまでを担います。そのため、業務の幅が広く、さまざまな専門知識や技術が必要です。また、グロースハックは戦術的な手法であり、分析対象は多種多様で、施策は企業によって大きく異なります。

つまり、グロースハックは分析能力やマーケティング能力などのマルチなスキルを必要とし、それらを兼ね備えた人材がいなければ困難であると言えます。

グロースハックの組織体制

マルチなスキルを有する人材といっても、あまりピンとこない人もいるでしょう。そこで、グロースハックには、どのような人材や組織体制が必要かについて解説していきます。

グロースハックに必要な人材

グロースハックに取り組む場合、「グロースハッカー」の存在は必要不可欠です。

グロースハッカーとは一言でいうと、「マーケターとエンジニアのハイブリッド職」です。マーケターの市場分析力と、エンジニアのような技術的視点を複合することで、効果的な戦略や仮説を立案します。

グロースハッカーには、以下の頭文字を取った「ABCDEの資質」が必要だと言われています。

Analyticity分析力

施策を決め実施するためのデータ分析力

Broad interest広い好奇心

広い視点で興味を持ち、インサイトを見つけていくための好奇心

Creative創造性

新しい価値やアイデアを生み出し続ける想像性

Discipline自律的

地味な作業も自らを律してコツコツとこなせる力

Empathy共感的

ユーザーの気持ちに寄り添う共感性

グロースハッカーは仮説・検証・改善を繰り返しながら、プロダクトをより良いものへと着実にアップデートしていきますが、CTAボタンの色を変更する、テキストを微調整するといった細かな改善を繰り返すことも多くあります。

また、想像力だけでなく緻密な分析ができることも重要で、トライ&エラーを繰り返しながら改善していく忍耐力も必要です。

なぜこのように多くの資質が必要になるのかというと、グロースハックはプロダクト開発からマーケティングまで部門横断的に行う手法だからです。そのため、グロースハックを行うためには、すべてを行えるグロースハッカーを確保する必要があるのです。

また、グロースハッカーが確保できない場合でも、以下のような人材がいればグロースチームを構築できます。

ハスラー

開発やデザイン以外をすべて担当する

ハッカー

開発を担当するエンジニア

ヒップスター

デザインを担当するデザイナー

この場合の「ハッカー」はグロースハッカーではなくエンジニアを指します。ヒップスターはデザイナーと同義です。

通常のエンジニアリングやマーケティングと異なるのは、「ハスラー」の存在でしょう。

ハスラーは、ハッカーやヒップスターが行う業務以外をすべて担当します。分析やプロモーション計画、ビジネス交渉だけでなく、オフィスの整理整頓などハッカーやヒップスターが業務に集中できるようにする役割を持ちます。

部門横断的なデータ基盤・チーム構築が重要

通常、プロダクト開発とマーケティングは、部門で分けられているのが一般的です。しかし、グロースハックでは事業を急成長させるために、開発部門とマーケティング部門の垣根を取り払わなくてはなりません。

そのためにも、部門横断的なデータ基盤や、部門を横断してジャッジできる権限を持つチームを構築する必要があります。

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  • 部門の垣根を越えた組織体制をどう構築すればよいのか分からない
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このようなお悩みは、数々の支援で成果をあげてきたTHE MOLTSにご相談ください。データ×マーケティングを強みとしており、貴社の状況やリソースに応じて、戦略立案から組織体制の構築・施策実行まで総合的に支援します。

グロースハックを外部に依頼する場合の注意点

グロースハックを構築からすべて内製する場合、部門をまたぐ必要があることから、セクショナリズム(各部門が自分たちの権限や利害こだわり、外部からの干渉を排除しようとする風潮)が生じている組織の場合は推進が困難になるでしょう。

また、グロースハックにおいては柔軟な発想・新たな価値を生み出すことが重要であるため、社内だけではアイデアが乏しくなってしまうという欠点もあります。

そのような場合に、知識やアイデアが豊富なプロにアドバイザーとして関わってもらうという手があります。また、社内でヒエラルキーが存在することでグロースハックの推進が難しい場合、関連部署と連携できる人材を外部から集めて展開することも大切です。

ただし、セクショナリズムが激しい組織の場合は、連携させようとすることで部門や人の衝突が生まれてしまう可能性が大いにあるため、事前に各部門から十分理解を得ておくなど、注意が必要です。

グロースハックの具体的な手順6STEP

ここまでの内容をお読みいただき、「自社でも実践しよう」と思えたのであれば、実際にグロースハックを実践していくための手順を押さえておきましょう。また、自社だけでは叶わない部分があると感じた場合は、外部パートナーを頼ることも検討してみてください。

グロースハックの具体的な手順は以下の通りです。

グロースハックの手順6STEP
  1. KGIの設定/データ基盤の構築
  2. 分析
  3. KPIの設定
  4. 仮説を立て、幅広くアイデアを出す
  5. 施策の実行/評価
  6. グロースサイクルを回す

では、それぞれの手順について、詳しく解説していきます。

1.KGIの設定/データ基盤の構築

上述したようなチーム構築をしたら、最終目標となるKGIを設定しましょう。グロースハックは部門ごとに分けられたKPIを追うのではなく、全社で連動した取り組みが重要です。そのためKGIを最初に設定し、それに沿ったデータ基盤の構築を行いましょう。

「売上の向上」や「ユーザー数の増加」など、企業によって設定するKGIは異なります。そのKGIを達成するためにはどうすべきかを逆算し、KPIを設定しましょう。

2.分析

KGIを決めたら、それを達成するために具体的な改善箇所を見つけるための分析を行います。必要に応じて、アクセス解析・ファネル分析・コホート分析を実施しましょう。

アクセス解析は、ユーザーの属性やサイト内での行動を把握できます。離脱が多い箇所の特定や、サイトの導線見直しなどには欠かせません。

ファネル分析では、ユーザーの利用プロセスを段階分けし、大きく離脱されている箇所を把握します。例えば、会員登録の段階で離脱率が高い場合、その部分を重点的に改善することが重要です。

コホート分析では、時間経過に伴うユーザー行動の変化を分析できます。どの程度の期間でユーザーが離脱しやすいか、キャンペーンの効果がどの程度あったかなどを把握することができます。

これらの分析方法については「グロースハックで行うテスト・分析の種類」で詳しく解説しています。

3.KPIの設定

分析で改善箇所を洗い出したら、グロースハックの進捗度を計るためのKPIの設定を行います。「グロースハックでやること」で4段階の取り組みを解説しましたが、KGIやKPIの設定を進める中で、どの段階の改善が必要かを検討しましょう。

グロースハックにおけるKPIは、以下の2つに当てはまるものを設定しましょう。

  • 行動に繋がるKPI
  • 期間で比較できるKPI

まず、施策のアイデアを出しやすいKPIであることが大切です。KPIを設定したものの、どのような施策を講じるべきかがわからなければ、効果的な戦略を立てられません。そのため、KPI達成のための行動に繋がるものを設定しましょう。

また、期間で比較できるKPIを設定していないと、適切な分析ができません。

例えば、ECサイトにおける「会員登録初日の購入者数」という指標があったとします。しかし、このKPIに対して施策を講じなくても、会員登録者数が増えれば購入者数も増えるため、適切なKPIとは言えません。

この場合は、「会員登録者数に占める購入者数の割合」を設定することで、期間ごとに正しく比較することが可能です。

KPIツリーの作成

KPIを設定しても、それがKGIに繋がらなければ意味がありません。そのため、各KPIがKGI達成に必要なものなのかを確認するために、KPIツリーを作成しましょう。

イメージがしやすいように具体例を交えて解説します。例えば以下は、Web広告から集客し、売上を増加させることをKGI(ゴール)としたKPIツリーです。

KPIツリーのイメージ

問い合わせの中でも「広告経由の問い合わせ」を増やすのであれば、「問い合わせフォームのアクセス数」と「フォームの入力完了率」の向上が必要であることがわかるため、それらをKPIとして設定していきます。

このように、KPIツリーでKGIから逆算してくことで適切なKPIを設定できるのです。

KPIツリーは基本的に末端から施策に取り組んでいくため、やるべきことの優先順位も把握しやすくなります。

4.仮説を立て、幅広くアイデアを出す

KPIを設定したら、どうすれば課題を改善できるかについて、データを基に仮説を立てます。SNSを例に挙げると、「ユーザー登録時に投稿したユーザーは継続率が高い」というデータがあった場合、「登録時に投稿してもらえれば、継続率が向上するのではないか」といった仮説が立てられます。

仮説を立てたら、施策のアイデアを出しましょう。ここで大切なのが、どれだけ柔軟なアイデアを考えられるかという点です。

例えば、製品ユーザー獲得数をKPIとした場合、広告を使うといった施策ばかりに目を向けるのではなく、

  • 「初回無料」や「無料お試し」等で、お金をかけずに試してもらう
  • 会員制にして、会員特典を付与する
  • キャンペーン等で売上を還元する

など、どうすればユーザー獲得数が伸びるのかを考え、目標を達成するための仮説と検証のために、幅広くアイデアを出しましょう。

▼アイデアを出すにはユーザーを深く理解することが重要

「アイデアを出そう」と思っても、今までとさほど変わらないようなアイデアしか出ない…ということもあるでしょう。そのような場合には改めてターゲットに対する理解を深めてみてください。

そうすることで、どのように仮説を実施すれば、ターゲットが反応してくれるのかを考えやすくなり、アイデアも出しやすくなります。

ターゲットを理解するには、ペルソナでターゲットの具体的な人物像を作り上げ、カスタマージャーニーマップでどのように態度変容するのかを考えます。

ペルソナを作成するには、ユーザーへのアンケートや営業担当者へのヒアリング、自社に蓄積された顧客データなどを活用し、実在する人物のように基本プロフィールや抱えている悩みなどを設定します。

また、そのペルソナが何を考えてどのような行動を起こし、商品やサービスの購入に至るのかをカスタマージャーニーマップとして可視化しましょう。

ただし、ペルソナやカスタマージャーニーマップは、作ったものが必ずしも正解とは限りません。定期的にアップデートして、よりターゲットに近いものを作り上げていきましょう。

ペルソナとカスタマージャーにマップについては、以下の記事で詳しく解説していますので、合わせてご覧ください。

参考記事
ペルソナとは|作成するための4ステップと活用事例3選を紹介
参考記事
カスタマージャーニーマップとは|4ステップに分けて作り方を解説 | MOLTS

5.施策の実行/評価

課題解決のための施策を考えたら、実装して検証しましょう。

検証結果で得られたデータを基に、施策の評価や改善を行います。どのような変化が見られたかをデータから読み取り、再度アイデアや改善施策を検討しましょう。

施策の実行と評価の段階で重要なのは、まずはもっともコストやリソースをかけずに小規模な施策を実行し検証することです。

グロースハックでは、部門間をまたぐ取り組みや、関係者が増えることで想像以上にコストや調整などのリソースがかかります。また、施策アイデアに対して有効かどうかは、データを検証しなければ判断が難しいものです。

そのため、まずは可能な限り小規模な展開から始めることで、長期的視点での投資対効果を高めることが可能です。

6.グロースサイクルを回す

5~6の仮説・検証・改善を、設定したKPIに到達するまで繰り返し回していきます。目標をクリアしたら次に優先度の高い課題の改善に取り組みましょう。

グロースハックで有効なフレームワーク「AARRR」

上記の「仮説を立て、幅広く施策アイデアを出す」ステップがグロースハック成功の鍵を握ると言っても過言ではありませんが、具体的にどのように施策を立てるべきか迷うケースも多いでしょう。

グロースハックで一般的に活用されるフレームワークとして「AARRR(アー)」があります。サービスの成長を5段階に分けたもので、それぞれの頭文字を取っています。

「AARRR(アー)」とはサービスの成長を5段階に分けたものの頭文字。施策例も。

上記5つの段階から、離脱率・継続率を分析することができ、それぞれに指標を定めて部分的に改善していくことで、最終的に全体改善に繋げられます。

では、AARRRの各段階について解説していきます。

Acquisition(獲得)

Acquisition(アクイジション)は、ユーザーを獲得する段階です。サービスやプロダクトをリリースしてもユーザーに認知されなければ利用してもらえないため、まず、ユーザーを獲得するところから始めます。

施策例

・Webサイトへの流入を増やすためにSEOを実施
・LINEの友だちを増やすためにクーポンを発行
・アプリのダウンロードを増やすためにイベントを実施

KPI例

・新規訪問者数
・PV数
・新規登録者数
・アプリダウンロード数

Activation(活性化)

Activationでは、獲得したユーザーにサービスやプロダクトの価値を感じさせ、利用してもらうための施策を実施します。

施策例

・Webサイトの離脱率が高い地点を分析し、改善する
・デザイン・操作性において使いやすさを重視する
・プロダクトを利用してもらうためにトライアルを提供する

KPI例

・オンボーディング完了率
・トライアル完了率
・チュートリアル突破率
・セッション時間

Retention(継続)

Retentionでは、サービスやプロダクトをユーザーに継続利用してもらう段階です。1回利用して終わりではいくら新規顧客を獲得してもキリがありません。そのため、継続的にプロダクトを利用してもらい、MAU(月間アクティブユーザー)を増やします。

施策例

・カスタマーサポートやチャットボットなどで、ユーザーの疑問を解消できる態勢を整える
・プッシュ通知でイベントやキャンペーン情報を配信する
・リピーター特典・サービスを実施する
・商品やサービスの効果的な使い方をメルマガで配信する
・ユーザーコミュニティを立ち上げる

KPI例

・継続利用率
・再訪問頻度
・月間アクティブユーザー数

Referral(紹介)

Referralは、サービスやプロダクトを利用するユーザーから、知人への紹介やSNSでシェアする段階です。既存顧客から潜在顧客を獲得します。

獲得した潜在顧客はAcquisitionから始め、再度段階ごとの施策を実施しリピーター化しましょう。

施策例

・WebサイトやアプリにSNSのシェアボタンを実装する
・レビューをした人向けの特典やクーポンを発行する
・紹介キャンペーンを実施する

KPI例

・レビュー数
・シェア数
・SNSの投稿数
・紹介ユーザー数

Revenue(収益)

Revenueは、サービスやプロダクトで収益化を目指す段階です。顧客の行動を分析してどのようなタイミングで収益が発生しているかなどを把握します。

施策例

・Webサイトがよく閲覧される時間を分析し、適切なタイミングでLINE配信を行う
・商品やサービスが購入されやすい経路を分析して整備する

KPI例

・購入ユーザー数
・購入金額
・LTV

グロースハックで行うテスト・分析の種類

何度もお伝えしたように、グロースハックではテストや分析が重要になります。どのようなテストや分析を用いるかは目標によって異なりますが、本章では一般的によく活用されるものを紹介します。

A/Bテスト

A/Bテストは、Webマーケティングでよく活用される調査方法です。サイト・メルマガ・広告などのデザインやテキストを一部分変更したテストパターンを2つ用意し、どちらがより効果的かを検証します。効果的なパターンを反映することで、流入を増やしたりクリック率を高めたりする効果が期待できます。

A/Bテストとは、Webマーケティングでよく活用される調査方法。CTA使った具体例。

上記はあくまで一例であるため、CTAのA/Bテストを実施する場合も、自社のデザインやテキストに合わせたテストを行いましょう。

グロースハックでは、テキストを一文追加する・ボタンのカラーを変えるといった小さな改善も行います。そのため、効果を比較できるA/Bテストはよく活用されます。

コホート分析

コホート分析とは、ユーザーを属性や条件でグループに分類し、ユーザーの行動や定着率を分析する手法です。それぞれのグループが時間経過によって、行動にどのような変化が起きるかを把握できます。

例えば、キャンペーンごとにコホートを設定し、月ごとのCVRや購入金額などの変化を追うことで、それぞれの長期的な効果を確認できます。

また、週ごとのリテンションレートなどを追えば、継続利用のための施策にも役立つでしょう。

最新版のGoogleアナリティクスであるGA4では、「コホートデータ検索」で分析情報を見ることが可能です。

管理画面左にある「探索」をクリックし、「テンプレートギャラリー」の中にある「コホートデータ検索」を選択すれば利用できます。

ファネル分析

ファネル分析とは、サービスの認知から購買に至るまでの段階を図式化したものです。段階が進むごとにどれだけのユーザーが離脱したかの分析に用います。

ファネル分析。大きな離脱を改善した図式。

上図は、アプリのダウンロードから翌日再訪するまでのファネル分析例です。会員登録の段階で大きく離脱しており、登録フォームが使いづらいといった何らかの問題があるとわかります。

どの購買プロセスの段階に問題があるかを視覚化できるため、効果的に課題を見つけ出せる分析です。

グロースハックの勉強におすすめの書籍

最後に、これからグロースハックを学んでいきたい人のために、初心者におすすめの書籍を3つご紹介します。

  • Hacking Growth グロースハック完全読本
  • いちばんやさしいグロースハックの教本
  • グロースハック 予算ゼロでビジネスを急成長させるエンジン

では、1つずつおすすめポイントを解説していきます。

Hacking Growth グロースハック完全読本

Hacking Growth グロースハック完全読本
※引用:日経 BOOK PLUS

「グロースハック完全読本」は、グロースハックの生みの親であるショーン・エリス氏と、Facebookのプロダクトマネジャーを務めるモーガン・ブラウン氏の二人が共同で書き下ろした書籍です。

本書は著者二人が多くの企業でグロースハックを実践してきた手法を基に、立ち上げから実践まで網羅的に記載されています。

本書は以下の二部構成です。

第一部グロースハックの基本

・専任チームの立ち上げ方
・ユーザーに愛される製品の作り方
・継続して追うべき指標の見極め方
・「実験」を通じて成長戦略を立てる方法

第二部グロースハックの実践

・多くのユーザーを「獲得」する方法
・製品・サービスの利用を「活性化」させる方法
・活性化させた状態をできるだけ長く「維持」する方法
・「収益化」につなげる方法

グロースハックをどのように始めればいいのかを、事例も含めてわかりやすく解説しています。

日本語解説版には「グロースハッカーの育て方」も記されており、グロースハッカーを目指したい人にもおすすめの一冊です。

いちばんやさしいグロースハックの教本

本書の著者は、株式会社VASILYの代表取締役CEO金山裕樹氏です。ファッションアプリとして世界で唯一Apple・Google両社のベストアプリに選出された「iQON」を、グロースハックで成功に導いた経験を基にして執筆されています。

役立つ手法や独自のフレームワークを丁寧に解説しており、サービスを最短で収益化し、成長させるためのノウハウが詰まった一冊です。

本書は2016年1月に発売された書籍であり、新しい手法を知るには適していません。しかし、iQONという事例を基に書かれているため、グロースサイクルを一から学びたい人にとっては理解しやすい一冊でしょう。

グロースハック 予算ゼロでビジネスを急成長させるエンジン

グロースハック 予算ゼロでビジネスを急成長させるエンジン
※引用:SOTECHSHA WEB

本書の著者は、株式会社The Startupの代表取締役であり、スタートアップ業界メディアThe Startup編集長の梅木雄平氏です。

本書では、グロースハックの基本とも言えるフレームワーク「AARRR」や、ユーザーグロースのための「グロースエンジン」の仕組みなど、網羅的に記されています。

また、グロースハックの事例を探しても海外のものばかり出てきますが、本書では日本の事例を徹底取材して掲載されています。

まとめ|サービスのライフサイクルが短い現代においてグロースハックは重要な手法になる

本記事では、グロースハックの意味や実施手順などを解説しました。

グロースハックとは、市場やユーザーニーズに合わせたサービス・プロダクト設計を行い、成長する仕組みをサービス自体に施策として組み込むことです。

グロースハックを実践することで、以下のようなメリットが得られます。

  • 低コストで事業を成長させられる可能性がある
  • 商品・サービスの品質を向上できる
  • データに基づいた改善ができる

グロースハックを行う場合の具体的な手順は次の通りです。

グロースハックの具体的な手順6STEP
  1. KGIの設定/データ基盤の構築
  2. 分析
  3. KPIの設定
  4. 仮説を立て、幅広くアイデアを出す
  5. 施策の実行/評価
  6. グロースサイクルを回す

グロースハックではどれだけ柔軟な施策アイデア・コミュニケーションを考案できるかが重要であり、改善と検証を高速で繰り返します。

グロースハックでよく活用されるフレームワークは「AARRR」です。

「AARRR(アー)」とはサービスの成長を5段階に分けたものの頭文字。施策例も。

これらの段階ごとに分析・改善を行うことで、結果として全体を改善できます。

グロースハックは幅広い専門知識と技術が必要なため、適切な人材がいなければプロにアドバイザーとして関わってもらうことも大切です。

サービスのライフサイクルが短い現代だからこそ、グロースハックを実施して自社のサービス・プロダクトを成長させましょう。

グロースハックに関するよくある質問

グロースハックとはどのような手法ですか?

グロースハックとは、製品開発とマーケティングを統合した概念であり、市場やユーザーニーズに合わせたサービス設計を行い、成長する仕組みをサービスに施策として組み込むことです。

グロースハックのプロセスはサービスを作るところから始まり、以下の手順で改善を繰り返します。

  1. サービスを運用するにあたって発生した課題を解決する仮説・KPIを立てる
  2. 仮説に沿ってサービスを見直し、検証する
  3. 改善が見られた部分を実装し、改善する

必要であれば、サービスを作るところからやり直すこともあります。

詳しくは「グロースハックとはサービス成長の改善に徹底して取り組むこと」をご覧ください。

グロースハックは自社でできますか?

グロースハックは幅広い専門知識や技術が必要なため、人材の確保が難しいケースが多くあります。また、グロースハックの業務をすべて実施できる「グロースハッカー」の設置が必要で、部門横断的なチーム構成が必要です。

詳しくは「グロースハックは自社でもできるのか?」をご覧ください。

グロースハックのフレームワークはどのようなものですか?

グロースハックのフレームワークは「AARRR」といい、サービス成長を5段階に分けたものです。

  • Acquisition:獲得
  • Activation:活性化
  • Retention:継続
  • Referral:紹介
  • Revenue:収益

それぞれに指標を定めて部分的に改善していくことで、最終的に全体改善に繋げられます。

詳しくは「グロースハックで有効なフレームワーク「AARRR」」をご覧ください。

グロース戦略の立案・体制構築・実施は、プロにご相談ください

「事業成長を加速させたいが、社内にプロダクトの開発・改善を担える人材がいない」「グロースに必要なデータ戦略や計測基盤がなく、打ち手を考えられない」といった課題を抱え、行き詰まってしまう企業は少なくないでしょう。

事業成長やマーケティング成果を期待されている方は、ぜひTHE MOLTSにご相談ください。弊社はデータ×マーケティングを強みとしており、次のような支援が可能です。

  • マーケティング課題の洗い出し
  • 事業グロースに向けた、マーケティング全体のコミュニケーション設計
  • データドリブンを実現するための基盤構築・データ戦略の立案
  • 各種施策の実行支援・プロジェクトマネジメント

まずは以下の資料から弊社の実績や支援内容をご確認ください。

著者情報

TAISHI TERAKURA

寺倉 大史

Media Consultant / Business Producer

業界歴9年以上。事業開発、オウンドメディア、コンテンツマーケティングを担当。藍染職人、株式会社LIGを経て、メディアコンサルタントへ。

担当領域の
サービス

  • コミュニケーションプランニング
  • BtoBマーケティング
  • コンテンツマーケティング
  • オウンドメディア
  • SEO
  • アクセス解析
  • WEBサイト制作

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